門屋cafe郷音の物語
築100年の歴史を持つ門屋。
その昔、ご先祖さまから受け継いだこの建物をある時、存続させるかどうかを迷う機会がありました。
門屋とは門の続きに建てられた門と一体の部屋のこと。この地方では「もんや」と読みます。家族と相談し、修繕をして何かに役立ててみよう、ということになりました。修復が終わった門屋を眺めながら、母が「ここでカフェでもしてみようか?」とぽつり。
それまでは建設業界でインテリアコーディネーターとして勤めていた為、飲食業の経験がない私は驚きましたが、そんな母の一言からすべてが始まりました。
郷音があるのは、自然豊かな大阪南部の上之郷という静かな場所です。
周りには商業施設も少なく、この場所でカフェを開いても誰も来ないのでは?と思いました。
でも、逆に人が集まる場所がないからこそ、ここにみんなが集える空間を作れたら素敵だな…そんな思いが湧いてきました。地元の方々と交流できる場になればと、カフェを始めることに決めました。
運命の出会い
カフェの準備を進める中、飲食業の知識もない私が手探りで動き始めた頃、友人の浅野さんから素晴らしい話を聞きました。彼はエチオピアで唯一のスペシャルティコーヒー農園「METAD社」で働いていて、地球の反対側で環境保護や地域のためにコーヒー作りに励んでいることを教えてくれたのです。
私は本当の「スペシャルティコーヒー」というものを初めて知り、その理念に心を打たれました。METAD社は「Sustainability at Its Best」という理念を掲げ、苗からカップまで顔の見える取引を行い、環境や人に優しいコーヒーを提供しています。私もこの活動を応援したいと思い、郷音で扱う豆はMETAD社のものにすることを決意しました。
コロナショックの中での挑戦
カフェの学校を卒業し、2年ほどコーヒー店で修行を積んでいたところ、2020年にコロナショックが世界を襲いました。
物流が混乱し、豆の輸入も不安定になりましたが、「ピンチはチャンス」と自分を奮い立たせ、門屋でのカフェ開業を本格的に始めることにしました。
衝撃的な美味しさとの出会い
初めてMETAD社のコーヒーを飲んだとき、その美味しさに衝撃を受けました。
それまでの私にとって、コーヒーは「苦さを楽しむもの」でしたが、METAD社のコーヒーはまるで果実のようにフルーティでまろやか。酸化していないので胃もたれもせず、ブラックでも飲みやすいのです。この美味しさをぜひ多くの人に知ってほしいと感じました。
少しずつ広がる評判
カフェをオープンしてから、お客さまが「郷音はコーヒーが美味しいお店」と口コミで広めてくださり、来店者が少しずつ増えていきました。特にスペシャルティコーヒーの魅力を知ってもらえるよう、来店される方にはその背景をお伝えしています。
おかげさまで、郷音も4周年を迎え、少しずつスペシャルティコーヒーの良さを理解してくれる方が増えてきたと感じます。
未来を守る一杯
食料危機やコーヒー危機が将来に迫っている今、価格だけにとらわれず、持続可能な環境作りや人や地球に優しい選択をしていきたい。
郷音では、METAD社のコーヒーを通じて、そんな未来への思いをお届けしています。
コーヒーの美味しさや、そこに込められた想いを感じていただき、一人でも多くの方がこの価値に共感して頂けたら嬉しいです。
100年の歴史を持つ門屋で、今また新しい物語が始まっています。